楽劇学会とは

  能・狂言、歌舞伎、文楽、民俗芸能…。日本には、演劇、舞踊、音楽といった諸要素が渾然となって構成されている総合的な体現芸術がたくさんあります。私た ちはそれらを「楽劇」と呼んでいます。その楽劇に何らかのかたちで関わる人、あるいは強い関心をもつ人たちを会員とする学会、それが楽劇学会です。 1993年4月に設立されました。年1回の大会と年4回の定例研究会開催、それに年1回の機関誌発行を主要な研究事業としています。

 楽劇学会は、つぎのような点で、同種の他の学会とは異なる、独自の性格を持っています。

  • いま存在する、あるいはかつて存在していた、さまざまの日本の楽劇を、個別的、孤立的にとらえるのではなく、その全体または相互の関連性のなかでとらえようとすること。
  • 楽劇を構成する演劇的要素、舞踊的要素、音楽的要素、その他の要素のいずれにも偏ることなく、その全体像を把握しようとすること。
  • 体現芸術としての楽劇の演技面や技法面を重視すること。
  • 創作、復活や復元、制作、演出、奏演、評論、研究など、さまざまな視点から楽劇を見ようとすること。

 3番目にあげた視点にもとづき、大会や定例研究会では、積極的に楽劇の実演をプログラムに組み込んでいます。けっして、余興としてではありません。

 機関誌『楽劇学』の創刊号巻頭に掲載した「創刊のことば」は、楽劇学会の目ざすところを披瀝したものです。ここにその全文を再掲するので、ご一読ください。

創刊のことば

 芸能の研究はあらゆる意味において総合的でなくてはならない。芸能の本質はさまざまな要素が総合された有機体だからである。

 このことはきわめて当然のことであり、たれしも熟知しているはずである。にもかかわらず、現在までの学問状況は必ずしもそうなっていないように思われる。かえって、対象の個別化・細分化の傾向さえないとはいえない。そういう現状に対する反省が、楽劇学会の出発点である。

 日本および東洋諸国の伝統的な芸能のほとんどすべてのものは、演劇・音楽・舞踊などの諸要素が不可分に結合して成立している総合芸術である。そこで、これを総称して「楽劇」と名づけた。

  対象となるわが国の伝統芸能の分野は実に多様にして多彩をきわめる。雅楽・田楽・延年・声明・能・狂言・歌舞伎・人形浄瑠璃・邦楽・日本舞踊・組踊・琉 舞・各種の民俗芸能などなど。これらのすべてに目を向けて真摯に学び、研究を進める必要がある。人それぞれの持つ専攻分野の狭い枠の内だけで考えるのでは なく、広く全般を見渡すことのできる視野を養い、たがいに遠慮なく意見を交換し、専門領域や時代区分を超える視野を獲得することが、翻って専門領域の研究 に新しい発見をもたらし、深みを与えることになるだろう。

 また、研究者と、実際の創造の現場にいる制作・演出・奏演およ び評論等の仕事に携わる人たちとの相互交流が活発になされねばならないことが痛感される。こんごの研究は、従来とかく傾きがちであった文献等の資料だけに 依るのではなく、実際の奏演をも重視する方法が用いられるべきであろう。

 楽劇学会の機関誌としてここに創刊する「楽劇学」は、右の目的に添うべく進められた研究の成果、あるいは奏演上の問題など、楽劇研究、楽劇創造の進歩のために、いささかの貢献をなし得ることを期している。

 

役員構成と分担

任期20232024年 理事・役員

[会長]三浦 裕子

[副会長]児玉竜一 伊海孝充

[監事]西野春雄 蒲生郷昭 

総務委員会

[理事]田草川みずき(委員長) 三浦裕子 奥山けい子 金子健

[委員]小林久子 原田真澄 山崎泉

例会委員会

[理事]今岡謙太郎(委員長) 児玉竜一 観世銕之丞

[委員]野川美穂子 横道闌 竹内有一 埋忠美沙 前島美保

編集委員会

[理事]伊海孝充(委員長) 中司由起子 配川美加

[委員]深澤希望 富山隆広 加納マリ

会計委員会

[理事]高桑いづみ(委員長) 薦田治子 塚原康子

[委員]曽村みずき 橋本かおる

オンライン特任委員  赤井紀美